ジョージア映画祭2024

自由、夢、人間─映画の王国ジョージアから─

ソ連邦時代(1921-1991)に製作されたジョージア映画の全貌に迫る。政治体制による厳しい抑圧下、ユーモアとアイロニーを交え、人間と社会の真実を捉えた独創的な作品の数々。2024年は名匠エルダル・シェンゲラヤ監督、ラナ・ゴゴベリゼ監督の作品を中心に、ジョージア映画史に燦然と輝く名作を一挙上映する。
2024年8月31日(土)~10月4日(金)、
東京・渋谷/ユーロスペース にて開催!
※開催期間1週間延長決定。詳しくはこちら

【以降、全国巡回予定】

主催:ジョージア映画祭
企画・制作:はらだたけひで
企画協力・日本語字幕:児島康宏
上映素材制作:大谷和之
共催:一般社団法人コミュニティシネマセンター
協力:ジョージア国立アーカイブ、ジョージア国立フィルムセンター、ジョージア・フィルム、ジョージア映画アカデミー
後援:在日ジョージア大使館

[上映・巡回に関するお問い合わせ]
コミュニティシネマセンター 
Tel:050-3535-1573 
Email:film@jc3.jp

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巡回情報

エリア 会場名 日程 詳細
東京 ユーロスペース 2024年8月31日(土)~9月27日(金)
2024年9月28日(土)~10月4日(金) ※1週間延長決定。詳しくはこちら
チラシ
チラシ
愛知・名古屋 ナゴヤキネマ・ノイ 2024年10月12日(土)~25日(金)
神奈川・横浜 横浜シネマリン 2024年12月7日(土)~27日(金)

作品紹介

ジョージア映画祭2024─ コーカサスからの風

「過去なくして未来はない」(ジョージア・フィルムの標語)。「ジョージア映画祭2024」では、2022年に引き続きソ連邦時代のジョージア映画を特集する。政治体制の抑圧に屈することなく、人間と時代を描いたジョージア映画黄金期の作品が、戦争と暴力が世界を覆う今日、一層の輝きを帯びて蘇る。

ジョージア(サカルトヴェロ)映画は、この国の歴史ある民族文化と同じく、独自の存在感を世界に示してきた。それはポリフォニー(多声音楽)のように多彩な豊かさを内包し、古代から伝わるワインのように芳醇である。そしてスプラ(ジョージア式宴会)のように民族の魂を謳い、高揚させ、度重なる苦難のなかで人々の心を支えてきた。

ジョージア映画は奇妙な現象だ。特別であり、哲学的に軽妙で、洗練されていて、同時に子どものように純粋で無垢である。ここには私を不覚にも泣かせるすべてがある。
(フェデリコ・フェリーニ監督)

◎Cプログラム、「カジェティ砦」の併映作品を変更いたします。
予定していた「雀の渡り」の上映素材の行方がわからず、バブルアニ監督自身が約半年間、捜索いたしましたが、期限までに見つけることが出来ませんでした。この歴史的作品は、残念ですが失われてしまったようです。代わりの併映作品として、同様の運命におかれ、以前に、発掘、上映したジャネリゼ監督「少女デドゥナ」を上映いたします。お詫びして変更いたします。
〇DCP上映 〇ジョージア語版・日本語字幕。R印はロシア語版・日本語字幕
〇★印は日本語字幕+英語字幕入り○「祈り」のみシネスコサイズ
Aプログラム

ラナ・ゴゴベリゼ監督特集

「金の糸」(2019)、「インタビュアー」(1978)で日本でも知られるラナ・ゴゴベリゼ監督は現在95歳。彼女は戦後のジョージア映画の発展を担ってきた一人であり、今も旺盛に製作を続けている。その長き挑戦の軌跡を回顧する。

  • ひとつ空の下 - 3つのエピソード

    ラナの長篇第1作であり、3話から成るオムニバス。1921年、赤軍侵攻下で避難する貴婦人の愛。1941年、大祖国戦争勃発下の娘の日々。1961年、「雪どけ」期の女性建築士の想い。歴史の節目となった年を背景に各時代の女性の運命を鮮烈に描く。

    ერთი ცის ქვეშ/Erti tsis kvesh
    ラナ・ゴゴベリゼ監督/1961年/白黒/80分

  • インタビュアー

    ラナの作品はいずれも高い知性と繊細な感性を感じさせ、女性と時代、女性と社会を鋭く捉える。本作はジョージア初のフェミニズム映画といわれ、女性新聞記者の家庭における葛藤、そして彼女の女性たちへの取材の日々をとおして現代を浮き彫りにする。

    რამდენიმე ინტერვიუ პირად საკითხებზე/Ramdenime interviu pirad sakitkhebze
    ラナ・ゴゴベリゼ監督/1978年/カラー/95分

  • 昼は夜より長い

    20世紀初頭の東ジョージア、秘境トゥシェティの山間の村が主な舞台。旅芸人が狂言回しとなり、主人公エヴァの波乱の生涯が、老いた彼女の回想でジョージアの近代史とともに語られる一大絵巻。1983年カンヌ国際映画祭正式出品作品。ジョージア国家賞。

    დღეს ღამე უთენებია/Dghes ghame utenebia
    ラナ・ゴゴベリゼ監督/1983年/カラー/105分 ★

  • 渦巻

    「転回」という邦題で1986年東京国際映画祭最優秀監督賞を受賞。80年代のトビリシで異なる人生を歩んでいた何人もの運命が交錯し、緊密に絡み合ってジョージアに生きる人々の心模様、歓びや哀しみを描く。ゴゴベリゼ監督の力量が遺憾なく発揮された名作。

    ორომტრიალი/Oromtriali
    ラナ・ゴゴベリゼ監督/1986年/カラー/98分 ★

Bプログラム

エルダル・シェンゲラヤ監督特集

ジョージア映画人同盟の代表を長く務めたE・シェンゲラヤ。彼の寓意豊かな作品は国民から圧倒的な支持を受けてきた。現在91歳。極上のユーモアとペーソス、人間への温かな眼差しと権力への批判を込めた傑作の数々を紹介。

  • 奇妙な展覧会

    エルダル独特のユーモアとペーソスが開花した作。西ジョージアの古都クタイシで、一人の彫刻家が師から受け継いだ大理石を前に傑作を夢見るが、激動する時代に翻弄されてゆく。自らの人生を受容してゆく姿を描いた人間愛に溢れる国民的映画。

    არაჩვეულებრივი გამოფენა/Arachveulebrivi gamopena
    エルダル・シェンゲラヤ監督/1968年/白黒/93分

  • 奇人たち

    ジョージア国民にこよなく愛される作品。無一文の青年が、憲兵隊が横暴を振るう奇妙な町で、牢獄に幽閉された老発明家とともに空飛ぶ機械を完成させようとする──自由への願いと全体主義への痛烈なアイロニーが込められた奇想天外な冒険物語。

    შერეკილები/Sherekilebi
    エルダル・シェンゲラヤ監督/1973年/カラー/79分

  • サマニシヴィリ家の継母

    19世紀末の緑豊かな田園が舞台。貴族だが今は貧しい老父が突然再婚を決意する。家族のために身を粉にして働く息子には父の遺産が減ることは大問題だった。しかし彼は父の相手を探すために旅に出る。心に染み入る悲喜劇。全ソ連映画祭グランプリ。

    სამანიშვილის დედინაცვალი/Samanishvilis dedinatsvali
    エルダル・シェンゲラヤ監督/1977年/カラー/87分

  • 青い山 - 本当らしくない本当の話

    カンヌ国際映画祭で歴史的名作ベスト20に選ばれた。若い作家が自作の小説を出版するために出版所を訪れる。そこの異星の住人のような職員の奇妙な姿をとおし、役人社会の現実を笑いと風刺で描いたエルダルの代表作。ソ連邦崩壊を予見した作品。

    ცისფერი მთები ანუ დაუჯერებელი ამბავი/Tsisperi mtebi anu daujerebeli ambavi
    エルダル・シェンゲラヤ監督/1983年/カラー/95分 ★

Cプログラム

よみがえる歴史的名作

ジョージア人の魂の礎である叙事詩『豹皮の騎士』の唯一の映画化作品、また日本では未だに知られざる名匠レフヴィアシヴィリとエサゼ、彼らに続く世代となるバブルアニとジョルジャゼ、各監督の個性溢れる作品を上映する。

  • カジェティ砦

    原作『豹皮の騎士』は、ジョージア人の心の礎ともいえる12世紀の長篇叙事詩。この国の黄金時代に宮廷詩人ショタ・ルスタヴェリからタマル女王に捧げられた。その詩のクライマックスである騎士たちのカジェティ砦攻略とネスタン姫の救出を描く。

    ქაჯეთი/Kajeti
    コンスタンティネ・ミカベリゼ監督/1936年/白黒/33分

  • ◎『カジェティ砦』併映作品

    少女デドゥナ

    母を亡くし、山間の村で父と暮らす少女の質朴な生活を静謐な映像でとらえる。自然と人間の暮らしを繊細に謳い上げた詩的作品。現在、プリントは失われ、今回は監督から提供されたDVDから上映素材を制作した。マンハイム映画祭グランプリ。

    დედუნა
    ダヴィト・ジャネリゼ監督/1985年/カラー/64分

  • 19世紀ジョージアの記録

    深い森を舞台に謎めいた陰謀が描かれる。モノクロームの夢幻的ともいえる詩的で象徴的な映像、迷宮のような世界に政治体制への思いが込められた伝説的作品。権力による暴力が超現実的な虚構空間で寓意的に表現され、時代を超えた内容である。

    XIX საუკუნის ქართული ქრონიკა/XIX saukunis kartuli kronika
    アレクサンドレ・レフヴィアシヴィリ監督/1978年/白黒/67分

  • ひとめ惚れ

    熱烈なサッカーファンのアゼルバイジャン人の少年が2歳年上のベラルーシ人の娘に恋をする。文化や年齢の違いが人々を巻き込む大騒動へと発展する。台詞が飛び交う群像劇を得意とするエサゼ監督(「ナイロンのクリスマスツリー」)の真骨頂の世界。

    ერთი ნახვით შეყვარება/Erti nakhvit shekvareba
    レゾ・エサゼ監督/1975年/カラー/90分/R

  • ロビンソナーダ 私の英国人の祖父

    1987年カンヌ国際映画祭最優秀新人監督賞受賞作。時代は赤軍に侵攻される1921年頃。ジョージアの山村でイギリス人電信技士が村の娘と恋に落ちる。時代が揺れ動く中で、彼は村人たちから追い出されるが、電柱の周囲は英国領だと主張して居座る‥。

    რობინზონიადა [ანუ ჩემი ინგლისელი პაპა]/Robinzoniada [anu chemi ingliseli papa]
    ナナ・ジョルジャゼ監督/1986年/カラー/76分

Dプログラム

ギオルギ・シェンゲラヤ監督と「ピロスマニ」

「ピロスマニ」は奇跡の映画である。1978年における日本公開は、観客の心に画家ピロスマニとジョージアの存在を強く印象づけた。ジョージアの過去と現在、そして未来が込められたジョージアに関心のある人には必見の作。

  • ピロスマニ

    ピロスマニ(1862?-1918)は日々の糧とひきかえに絵を描き続けた。シェンゲラヤ監督は画家の人生と魂を清冽に描き、その姿にジョージアの人と文化、歴史、風土への思いを重ねた。そして映画「ピロスマニ」はイコンのように崇高な輝きを帯びてゆく。

    ფიროსმანი/Pirosmani
    ギオルギ・シェンゲラヤ監督/1969年/カラー/86分

  • アラヴェルディの祭

    タルコフスキー監督が「この作品によって映画の新しい時代が始まった」と評したという。カヘティ地方の大聖堂で行われる由緒ある祭で一人の男が起こした行動をとおし、ジョージアの民族的伝統の意味を問う鮮烈な映像詩。(原作は未知谷刊)

    ალავერდობა/ Alaverdoba
    ギオルギ・シェンゲラヤ監督/1962年/白黒/42分 ★

  • ◎『アラヴェルディの祭』併映作品

    ムラヴァルジャミエル 追悼三部作

    エルダル・シェンゲラヤ監督が亡き盟友に捧げる短篇三部作。「井戸」はミヘイル・コバヒゼ監督に、「歌」は合唱アンサンブル「ルスタヴィ」のアンゾル・エルコマイシヴィリ氏に、「小鳥」は弟ギオルギ・シェンゲラヤ監督に捧げられている。

    მრავალჟამიერ/Mravalzhamier
    エルダル・シェンゲラヤ監督/2022年/カラー・白黒/60分

Eプログラム

ジョージア映画祭アンコール

過去2回のジョージア映画祭から5作品を再上映する。戦後の国民的ミュージカル、新風を吹き込んだ作品、1960年代のコバヒゼ監督、ココチャシヴィリ監督の名作。いずれもジョージア映画を語るうえで見逃せない名作。

  • ミヘイル・コバヒゼ監督特集

    コバヒゼ監督のユーモアとエスプリ、洒脱な感性は永遠である。「結婚式」(1964年/20分)、「傘」(1967年/19分)、「音楽家たち」(1969年/13分)を上映。亡きコバヒゼ監督に捧げられたE・シェンゲラヤ監督の「井戸」(2020年/20分)も併映。

    მ. კობახიძის შედევრები/M. Kobakhidze's masterpieces
    *4作品で72分を予定

  • マグダナのロバ

    1956年カンヌ国際映画祭短編部門グランプリを獲得、ジョージア映画を世界に知らしめた。後の巨匠アブラゼ監督とチヘイゼ監督の第1作。病気のロバを救った貧しい母子の姿を描き、硬直化した映画界に新風を吹き込んだ。旧邦題「青い目のロバ」。

    მაგდანას ლურჯა/Magdanas Lurja
    レゾ・チヘイゼ+テンギズ・アブラゼ共同監督/1955年/白黒/71分 ★

  • ◎『マグダナのロバ』併映作品

    ピロスマニのアラベスク

    パラジャーノフ監督はトビリシ生まれのアルメニア人。その傑出した才能のために投獄され、長く沈黙を強いられたが、ジョージア映画人の協力で復活を果たす。画家ピロスマニへの敬愛の思いを自らの汎コーカサス的ともいえる目眩く美意識で描く。

    არაბესკები ფიროსმანის თემაზე/Arabeskebi Pirosmanis temaze
    セルゲイ・パラジャーノフ監督/1985年/カラー/22分/R

  • ケトとコテ

    19世紀半ばのトビリシ、商人の娘ケトと公爵の甥コテが、仲人ハヌマの助けを得て困難を乗り越え、無事結ばれるまでを描く。今もジョージアの人々に愛される国民的娯楽映画。戦後の沈滞した社会に活気を生むために製作された絢爛豪華なミュージカル。

    ქეთო და კოტე/Keto da Kote
    ヴァフタング・タブリアシヴィリ+シャルヴァ・ゲデヴァニシヴィリ共同監督/1948年/白黒/90分 ★

  • 大いなる緑の谷

    名匠ココチャシヴィリ監督の代表作。広大な草原を背景に、祖先からの伝統を重んじる牛飼いが、近代化や集団農場化という中央政府の政策に歩み寄れず、家族とともに苦悩する姿を描く。俳優たちの力強い演技、白黒の映像が心に迫る不朽の名作。

    დიდი მწვანე ველი/Didi mtsvane veli
    メラブ・ココチャシヴィリ監督/1967年/白黒/85分

Fプログラム

オタール・イオセリアーニ監督特集

昨年12月に亡くなった世界的名匠イオセリアーニ監督。彼がソ連時代にジョージアで製作した作品はすべて上映禁止にされた。しかしその反骨精神、ユーモアとアイロニー、哲学的思索と詩的感性は永遠である。追悼上映。

  • 落葉

    葡萄とワインのジョージア人との深い関係。自らの矜持を示した長編第1作。ワイン工場に就職した青年が、品質よりも増産に走る工場に疑問を抱いて行動を起こす姿を、ユーモアを交えて描く。庶民のなにげない日常の描写が愛おしく、心に残る。

    გიორგობისთვე/Giorgobistve
    オタール・イオセリアーニ監督/1966年/白黒/95分/ビターズ・エンド提供

  • 歌うつぐみがおりました

    オーケストラの一員である青年は時間を惜しむように、演奏中も抜け出してはデートや宴会等、生きる歓びを求めている。しかし慌ただしい都会人の生活はどこか孤独で哀しく、監督の現代社会への冷静な観察とともに人間への愛が感じられる。

    იყო შაშვი მგალობელი/ Iqo shashvi mgalobeli
    オタール・イオセリアーニ監督/1970年/白黒/81分/ビターズ・エンド提供

  • 田園詩

    クラシックの演奏家グループが、西ジョージアの田舎で夏の休暇を過ごす。都会人と農民、モーツァルトと牛の鳴き声、異なる世界で暮らす両者の交流。農村にはのどかな時が流れ、大きなドラマが起こるわけではないが、妙なるドラマがいくつも誕生してゆく。

    პასტორალი/Pastorali
    オタール・イオセリアーニ監督/1976年/白黒/98分/ビターズ・エンド提供

  • イオセリアーニ監督短篇特集

    「珍しい花の歌」საპოვნელა(1959年/16分/R)、「四月」აპრილი(1962年/47分)、「鋳鉄」თუჯი(1964年/17分/R)、「ジョージアの古い歌」ძველი ქართული სიმღერა(1968年/21分/R)、イオセリアーニの初期の傑作短篇を一挙上映。

    ო. იოსელიანის მოკლემეტრაჟიანი ფილმები/O. Iosseliani's short films
    オタール・イオセリアーニ監督/約101分/ビターズ・エンド提供

Gプログラム

テンギズ・アブラゼ監督「祈り 三部作」

巨匠テンギズ・アブラゼ監督が20年の歳月をかけて完成させたジョージア映画の金字塔。「人の美しい本性が滅びることはない」という信念のもと、人間の迷妄や欲望がもたらす社会の暴力を描き、人間性を虐げるものを告発する。

  • 祈り

    コーカサスの厳しい山岳地帯で暮らすキリスト教徒とイスラーム教徒、村同士の因縁の対立をとおして、人間の愚かさと過ち、それらを超える精神を白黒の荘厳な映像で描く。国民的作家V・プシャヴェラの叙事詩が原作(冨山房インターナショナル刊)。

    ვედრება/Vedreba
    テンギズ・アブラゼ監督/1967年/白黒/78分/ザジフィルムズ協力

  • 希望の樹

    20世紀初頭の東ジョージアの美しい農村が舞台。時代の大きな変化を予感して村人たちはそれぞれに動揺を隠せない。そのなかで美しい娘と青年の純愛が村の因習のために打ち砕かれてゆく。ギオルギ・レオニゼの短篇集が原作(未知谷刊)。

    ნატვრის ხე/Natvris khe
    テンギズ・アブラゼ監督/1976年/カラー/107分/ザジフィルムズ協力

  • 懺悔

    スターリンによる暗黒の時代を初めて描いて、ソ連邦の「改革」の象徴となった作品。架空の地方都市で元市長の墓が何者かに暴かれ、犯人の女性が捕らえられる。彼女の証言で元市長の独裁によって多くの市民が粛清されたことが明らかにされてゆく。

    მონანიება/Monanieba
    テンギズ・アブラゼ監督/1984年/カラー/153分/ザジフィルムズ協力

Hプログラム

母と娘 - ヌツァとラナ

ジョージアで最初の女性監督ヌツァ・ゴゴベリゼはラナ・ゴゴベリゼ監督の母である。ヌツァは1930年代、スターリンによる粛正のために流刑された。ヌツァとラナ、二代にわたる映画への取り組みと彼女たちの時代を捉える。

  • 母と娘 - 完全な夜はない

    ラナ・ゴゴベリゼ監督が95歳にして、ソヴィエト体制下における母ヌツァとの日々を語った作品。ヌツァはスターリン時代に家族を粛清され、自らも10年間流刑された。厳しい時代を生きた母へのオマージュ。今年のベルリン国際映画祭に正式出品された。

    დედა-შვილი [ან ღამე არ არის არასოდეს ბოლომდე ბნელი]/Deda-shvili [an ghame ar aris arasodes bolomde bneli]
    ラナ・ゴゴベリゼ監督/2023年/カラー・白黒/89分

  • ウジュムリ

    ソ連邦初の女性監督による長篇劇映画。完成後、ヌツァは粛清され、作品も押収されて近年まで存在すら確認できなかった。西ジョージアの湿地帯で中央政府の啓蒙政策、水路建設の人々と土着の住民の軋轢を描く。ギア・カンチェリの音楽が入った新版。

    უჟმური/Uzhmuri
    ヌツァ・ゴゴベリゼ監督/1934年/白黒/56分/サイレント・サウンド版

  • ◎『ウジュムリ』併映作品

    ブバ

    コーカサスのラチャ地方の大自然のなかで、村人の厳しい労働と四季折々の暮らしを描いたドキュメンタリー。幼子の描写や村人たちの群舞に、斬新なモンタージュを用い、彼女の傑出した才能を感じさせる。「ウジュムリ」と同じく近年発見された。

    ბუბა/Buba
    ヌツァ・ゴゴベリゼ監督/1930年/白黒/39分/サイレント・サウンド版 ★

  • ペチョラ川のワルツ

    1937年の大粛清という苛酷な時代を真正面から描いた自伝的作品。父は人民の敵として処刑され、母は北の大地に流刑され、雪原での厳しい日々を強いられる。娘アナは一人残され‥。アブラゼ監督「懺悔」に続く、スターリン時代の暗黒を描いた作品。

    ვალსი პეჩორაზე/Valsi pechoraze
    ラナ・ゴゴベリゼ監督/1992年/カラー・白黒/106分

  • 金の糸

    作家エレネは娘夫婦と暮らし、79歳の誕生日を迎えた。そこへ娘の姑のミランダが引っ越してくる。彼女はソ連時代、政府高官だった。またかつての恋人アルチルから数十年ぶりに電話があり、3人の記憶が重ねられ、過去の困難な時代が浮き彫りにされる。

    ოქროს ძაფი/Okros dzapi
    ラナ・ゴゴベリゼ監督/2019年/カラー・白黒/89分/ムヴィオラ提供

さらにジョージア映画を知りたい方へ

  • ジョージア映画祭2024 パンフレット

    B5版60ページ/定価1200円(税込)

  • ジョージア映画全史
    ─ 自由、夢、人間

    はらだたけひで著/A5版496ページ/教育評論社/定価3200円+税/2024年刊

  • 思い出されることを思い出されるままに
    ─ 映画監督ラナ・ゴゴベリゼ自伝

    ラナ・ゴゴベリゼ著 児島康宏訳/四六判464ページ/白水社/定価5800円+税/2024年9月刊

  • グルジア映画への旅
    ─ 映画の王国ジョージアの人と文化をたずねて

    はらだたけひで著/四六判246ページ/未知谷/定価2200円+税/2018年刊

  • ◎映画の原作本として

    「20世紀ジョージア短篇集」

    児島康宏訳/未知谷/定価3000円+税
    ※「希望の樹」、「マリタ」(希望の樹)、「アラヴェルディの祭」所収

  • ◎映画の原作本として

    「祈り」

    V・プシャヴェラ作 児島康宏訳/冨山房インターナショナル/定価2200円+税

ジョージア(サカルトヴェロ) Georgia=Sakartvelo

ジョージアはコーカサス山脈の南に位置し、ロシア、アゼルバイジャン、アルメニア、トルコと国境を接している。面積は北海道の約80%、人口は約370万人。ジョージア人を中心に多様な民族が暮らし、主な宗教はジョージア正教である。ジョージア語では国名をサカルトヴェロという。3000年の歴史があるといわれ、東西交易の要所であるために周辺の国々から度重なる侵略を受けてきたが、今日まで独自の言語、文化を守り通してきた。ロシア帝国の支配から1918年に独立。1921年から70年間、ソ連邦に組み込まれていたが、1991年に独立を回復する。しかし内戦に加え、アブハジア、南オセチアにおける分離独立の紛争が激化し国内は混乱した。このために映画も傷つき、1000以上の作品が上映不能になった。現在、ロシア、ウクライナの戦争の影響を受けながらも、ワイン発祥の地といわれるこの国には世界から多くの観光客が訪れ、世界の人々に新鮮な驚きを与えている。